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中堅スーパーの売上と利益の比較で見えてくるもの:企業分析の初歩

2021年7月13日

ここ2回ほどロピアに関係して小売・スーパーマーケット業界に関して記事を書いてきました。

今回の記事はその総括として中堅規模の食品スーパーの経営データを実際に比較分析をしてみようと思います。

データの分析というと難しく感じますが、必要な数字をエクセルに入力し、眺めているだけでも発見があるものです。

株式上場をしているか、上場していなくても有価証券報告書を開示している食品スーパーで、なじみのあるところもあればそうでないところもあるかもしれません。

 

ここに挙げたスーパーチェーンで働いている人や就職・転職活動でこれらの会社を志望している人にとって参考になれば幸いです。

 

食品スーパー業界を取り巻く状況

以下は一般的な業界の動向をまとめました。

業界がどういう状況で、どういう問題意識を持っているか?という点のおさらいとして読んでください。

この辺の情報を踏まえると、データの見え方も少し変わります。

すでにコロナ禍による初めての緊急事態宣言が2020年4月に発令されてから1年以上が経ち、以前とは生活スタイルが大きく変わりました。

 

リモートワークがメインとなって、あまり家から出なくなった人も増えたり、外出・外食を控えて自宅で食事をとる時間が増えたり、結果として、以前よりも地元の食品スーパーで買い物する頻度や購入金額が増えた人も多いのではないでしょうか。

 

実際、食品スーパー全体ではコロナ特需とも言われ、売上が急増し、奮闘する社員・パートさんたちの頑張りに対して一時金を払う企業もありました。

 

今でこそ活況を呈しているものの、中堅規模の食品スーパーは構造的な問題を2つほど抱えています。

 

1つは規模の力で攻めてくるメガストア(イオンやヨーカドーなど)の脅威です。

 

業界トップのイオンはGMS(総合スーパー)部門と食品スーパー部門でそれぞれ3兆円ずつの売上を持っています。

 

小売業にとって規模は最大のパワーです。

同じ商品を調達するにしても、大量に仕入れることで安くなります。

この如何ともしがたい規模の差のある相手の脅威は常につきまといます。

 

もう1つは、異業種の参入の脅威です。

具体的にいうとドラッグストアとの熾烈な闘いです。

セイムスでもサンドラッグでもどこでもいいんですが、精肉コーナーがあったり、野菜が売られていたり、大なり小なり食品スーパー的な色が強くなっています。

 

ドラッグストアにおける食品の割合は増加傾向にあり、メガストアに対して地域の存在感で対抗したいスーパーにとって、ドラッグストアは目の上のたんこぶになりつつあるのです。

 

このように、前門の虎(メガストア)、後門の狼(ドラッグストア)という挟み撃ちにあっているというのが食品スーパーの現状といえるでしょう。

 

これを打破するためには、「これだけは負けない」という特徴のある品ぞろえ、地域から選ばれる店づくりをする必要があります。

それを実践できているのか?というのが熾烈な競争で生き残れるかの分岐点といっても過言ではありません。

 

売上・利益からみる収益性

 

左から売上高規模が大きい会社を並べています。

各社の2020年度業績における売上高と粗利益、営業利益などを比較すると以下になります。

ちなみにそもそも売上高と利益がよくわからないという方は以下の記事から基礎を学ぶのがオススメです。

社会人として知っておきたい基礎知識:損益計算書

  オーケー ヤオコー マックスバリュ東海 ベルク いなげや ハローズ マミーM

(※9決)

売上高 5088 4871 3494 2816 2556 1482 1242
粗利益 1207 1445 1019 717 723 376 322
営業利益 327 224 117 119 69.8 76 47
粗利益率 23.7% 29.7% 29.2% 25.5% 28.3% 25.4% 25.9%
営業利益率 6.4% 4.6% 3.3% 4.2% 2.7% 5.1% 3.8%

※マミーマートは9月期決算であるため、2019年9月から2020年9月の1年間のデータとなります。

この比較表から読み解ける部分はいくつかありますが、わかりやすいところでいえば「営業利益率」の比較でしょう。

 

売上高に対して、仕入れ原価や人件費などを差し引いて、どのくらいの割合を利益として残せているのか?を示す指標で、これが高いほど稼ぐ力が強いということになります。

一般的に食品スーパーの業態であれば3~4%くらいの水準だと優等生と言われます。

今回の利益率のデータは、コロナ禍に伴う特需が反映されていることもあり、イオン九州全体的に良好なパフォーマンスになっています。

 

比較企業の中で最大規模のオーケーは利益率が6.4%と図抜けていますが、ここ2年ほどで利益率を大きく伸ばしており、これが一過性のものなのか、それとも真の実力をつけているのか?は気になるところです。

ちなみに、オーケーの快進撃についてはいくつもの分析記事が出ています。

イオンも逃げ出す「OKストア」の半端ない集客力

 

<オーケーの時系列収益データ (単位:億円)>

2016 2017 2018 2019 2020
売上高 3313 3578 3942 4360 5088
成長率 1.08 1.1017 1.106 1.167
営業利益 144 145 181 227 327
成長率 1.0069 1.2483 1.2541 1.4405
利益率 4.3% 4.1% 4.6% 5.2% 6.4%

 

 

中国・四国地方を中心に展開しているハローズは、オーケーと同様に直近の利益率が非常に良かった形であり、過去5年も売上を成長させながら4%台をキープしています。

首都圏の人だと聞きなれない企業ではありますが、以下の記事では「本州有力企業のハローズというスーパーがある。この企業は四国フロンティアを、戦略的に攻めることで成長した代表格」として分析されています。

 

IT Mediaビジネス Online

小売・流通アナリストの視点:瀬戸大橋30周年、四国は本州スーパーの草刈り場に

 

<ハローズの時系列収益データ (単位:億円)>

2016 2017 2018 2019 2020
売上高 1118 1182 1239 1312 1482
成長率 1.0572 1.0482 1.0589 1.1296
営業利益 46 49 49 52 76
成長率 1.0652 1 1.0612 1.4615
利益率 4.1% 4.1% 4.0% 4.0% 5.1%

 

関東圏で収益力が高いことで有名な食品スーパーとして有名なヤオコーとベルクも過去5年のいずれも4%を超えています。

オーケー同様、メディアで研究記事が紹介されています。

商品、個店経営、開発、財務……業界屈指の高収益チェーン ヤオコーが最強の理由

 

 

 

<ヤオコーの時系列収益データ (単位:億円)>

2016 2017 2018 2019 2020
売上高 3274 3982 4177 4422 4871
成長率 1.2162 1.049 1.0587 1.1015
営業利益 156 169 179 198 224
成長率 1.0833 1.0592 1.1061 1.1313
利益率 4.8% 4.2% 4.3% 4.5% 4.6%

 

<ベルクの時系列収益データ (単位:億円)>

2016 2017 2018 2019 2020
売上高 1911 2087 2228 2369 2816
成長率 1.0921 1.0676 1.0633 1.1887
営業利益 91 95 98 104 119
成長率 1.044 1.0316 1.0612 1.1442
利益率 4.8% 4.6% 4.4% 4.4% 4.2%

 

こうしてみると、ベルクの利益率の推移に違和感があります。

食品小売り全体では2020年度の利益率が高めに出がちであるにもかかわらず、直近の利益率は前年から悪化、というより5年前からどんどんダウンしています。

ベルクに就職・転職・営業活動などで関わろうとしている人にとっては、このあたりの変調が何を意味しているかはちゃんと確認しておくべきでしょう。

 

今回の記事のまとめ

ここまで同業他社の収益データの比較、そして時系列での収益データの比較をしてみました。

 

売上高と営業利益という収益分析の基本中の基本のデータのみを今回は扱いましたが、

売上高と営業利益の比率(=営業利益率)というモノサシによって、単純に規模が大きい・小さいという話だけにとどまらず、稼ぐ力を比べることができました。

 

ただ、これは基本中の基本であり、いろいろなデータを比較・分析することで会社のことをさらに詳しく覗い知ることができます。

 

説明会や面接、商談などの場で話を聞けば済む、という人もいますが、そうした場でどこまで深い話を聞けるかは事前準備にかかっています。

会社を分析する力を磨いておいて損はないと思います。

 

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