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話題のあの会社をリサーチ ①ロピア(小売業)

カトパンの愛称で知られるフリーアナウンサーの加藤綾子さんが6月6日に結婚を発表し、そのお相手が神奈川県に本社を置き、首都圏などに約60店舗を展開する売上2000億円超のスーパーマーケット会社の2代目社長であることは大変な話題になりました。

 

そのスーパーマーケット会社とはロピア。

首都圏に住んでいる人ならば利用したことはなくても、なんとなく名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

当ブログは就職・転職のための企業分析!を謳っており、小売業という身近なビジネスでもあり、今回の記事でちょっとリサーチしてみようと思います。

就職・転職先としてロピアを意識している人、小売業全体に興味がある人、カトパンが安泰かどうか気になっている人(笑)は読んでみてください。

 

■非上場のロピアの情報を可能な限り洗い出してみた

ロピアという社名は、ロープライスな(食の)ユートピアに由来しており、基本的に低価格路線です。

 

勢いよくリサーチしてみよう!と言ったものの、実は株式会社ロピア (代表社:高木 勇輔)は株式上場していないため、分析材料が詰め込まれた有価証券報告書が開示されておらず、あまり情報が出ていません。

ここでは深く語りませんが、東京証券取引所などに株式上場をしている企業は、株主・投資家のために一定の情報を出す義務があります。

 

その義務の一つが有価証券報告書であり、ここに書いてある情報は株主・投資家のみならず、就職・転職希望者やこの会社と取引したいと考える営業マン、さらにはその会社で働く人にとっても有意義です。

しかし、残念ながらロピアには開示義務がないので、ウェブサイトその他にも情報があまりありません。

 

私のほうで可能な限り集めてみました。

 

・売上高:2068億円

・店舗数:60店舗

・社員数:1307人 ※アルバイトは恐らく含んでいない

・平均年齢:30.5歳

・初任給:31.8万円(所定外労働45時間分を含む)

・チーフ平均年収650万円(2020年)

 

おおよその情報はロピア自身の会社サイトから集めましたが、残念ながら、会社分析で非常に重要となる利益に関する情報が見つかりませんでした。

http://lopia.jp/company

 

集めた数字たちの解釈は、別項の同業他社との比較分析でお伝えします。

売上や利益の概念がよくわからない人は以下の記事もどうぞ。

社会人として知っておきたい基礎知識:損益計算書

 

会社サイト以上に情報があったのは、新卒採用の学生さん向けのマイナビのサイトです。

https://job.mynavi.jp/22/pc/search/corp87262/outline.html

 

ここでは以下のような売上拡大の軌跡が示されていましたが、

2006年から2011年までの5年間で倍増!

さらに2011年から2016年の5年間で倍増!

さらに2016年から2021年の5年間はほぼ3倍増!!

という、とてつもない成長を成し遂げています。

・2006年からの売上高経年データ

決算期 売上高(単位:円)
2006年2月 174億
2007年2月 185億
2008年2月 199億
2009年2月 224億
2010年2月 277億
2011年2月 350億
2012年2月 437億
2013年2月 501億
2014年2月 577億
2015年2月 701億
2016年2月 817億
2017年2月 954億
2018年2月 1,166億
2019年2月 1,356億
2020年2月 1,595億
2021年2月 2,068億
2022年2月 2,403億(計画)

 

この辺は勢いがある、という評価もできる一方、急速な成長スピードに社員育成など会社の足腰部分がちゃんと追いついているのかな、という懸念もあります。

 

とはいえ、1社単独でみても、良いのか悪いのか、あんまりよくわからない、というのが本音ではないでしょうか。

 

ここは同じ商売をしていて、なるべく規模が近いところと比較してみようと思います。

 

■「いなげや」や「ベルク」など(=同業他社)と比較してみた

前項ではロピア自身の情報を集めましたが、これだけだと評価できるのかできないのかがよくわかりません。

 

業界として優れているのかは、やはり同業他社と比較するのに限ります。

比較する先ですが、スーパーといっても、イオンやイトーヨーカドーのような全国規模のチェーンと比較するよりはなるべく規模の近いところを選ぶようにしました。

 

・収益性

ロピア いなげや ベルク ヤオコー オーケー
売上高(億円) 2068 2556 2816 4871 5088
店舗数 60 133 123 181 123
店舗当たり売上高(億円) 34.5 19.2 22.9 26.9 41.4
連結従業員数 1307 2805 2206 3804 11945
臨時従業員 ?? 10872 5586 12251 2928
一人当たり売上高(億円) 1.58 0.91 1.28 1.28 0.43
一人当たり売上高(含臨時)(億円) ?? 0.19 0.36 0.30 0.41

 

本当ならここで、粗利益(売上総利益)や営業利益などの利益面も含めて分析したいのですが、なにぶん情報がありません。

 

わかっている情報の中から「お店」と「人」の収益性(稼ぐ力)を分析しようと思います。

 

まず上の図を見てわかる通り、ロピアの店舗数は同じ2000億円規模のいなげやとベルクと比べると異様に少ないです。

 

結果として、1店舗が得られる平均の売上高(店舗当たり売上高が34.5億円となっています。

この店舗当たり売上高は、お店の稼ぐ力そのものだけでなく、お店で何を取り扱っているか?という事業モデルの特徴も影響を与えます。

この観点で、圧倒的なのはオーケーストアですね。

いなげやの倍以上となっています。

とはいえロピアも収益性の高さで有名なヤオコーの26.9億円を超えているので、ここに企業理解のためのポイントがあるんだろうな、という印象です。

 

もう一つの「人」の観点でいうと、従業員一人がどれだけの売上高を生み出しているかを示す一人当たり売上高では、比較した4社に対してトップとなる1.58億円でした。

まあ、これはちょっと割り引く必要があると考えていて、スーパーという業態はお店の運営ではアルバイト・パートたち(=臨時従業員)のパワーが大きなウェイトを占めています。

実際、オーケーは社員1人あたり、では0.43億円とめちゃめちゃ低いのですが、臨時従業員を含めて再計算すると0.41億円となり、この観点では4社の中で1番良い数値になります。

 

(オーケーの従業員がなぜこんな多いのかはよくわかりませんが、パート雇用ではなく契約社員形式にしたり、管理の仕方が特殊なのかもしれません)

 

そういう意味でいうと、アルバイト・パートといった臨時従業員の存在を含めた頭数でみる必要があるのですが、残念ながらロピアは臨時従業員(パート・アルバイト)のデータを非開示のため、これ以上はよくわかりません。

 

・労務関係

 

ロピア いなげや ベルク ヤオコー オーケー
連結従業員数 1307 2805 2206 3804 11945
平均年齢 30.5 45.8 32.7 39.4 46.1
平均給料(万円) 650※ 558 538 601 325
初任給(万円) 31.8 21.9 21.7 21.5 23.4

※チーフ職(管理職)のデータ

ロピアの平均年齢30.5歳というのは若さが溢れているのは確かなのですが、この辺は従業員数が1300人という少なさも影響しているかもしれません。

 

表にも注意書きしましたが、ロピアの平均給料はチーフ職という管理職待遇のものなので他社との比較はあまり適していません。

ここは参考程度に。

 

初任給は圧倒的にロピアがトップとなっています。

これにはカラクリがあって、31.8万円という数値は固定残業代45時間分(78700円分)を含んでおり、これを除外すると約23万円となります。

固定残業代とは、所定外労働(≒残業)をしてもしなくても45時間分は最低限支払う、という報酬制度です。

一般論でいえば、こういう制度がある企業は固定された時間外労働報酬よりも長く働かせられているケースが多いです。

というのは、この制度は労働と日常の境目が曖昧で時間管理に向いていない、営業の仕事やクリエイティブな仕事で導入されることが多く、時間管理しやすい小売業でなぜ導入しているのか?と疑問がわきます。

 

ちなみに、リクナビサイトで開示されているロピア以外の月平均の残業時間(月平均所定外労働時間)は以下のようになっています。

・スーパー各社の月平均残業時間

いなげや:18.0時間(2019年度実績)

ベルク:13.8時間(2019年度実績)

ヤオコー:23.3時間(2019年度実績)

オーケー:20.1時間(2020年度実績)

こうみると45時間が基本のロピアの見方が変わりますね(笑)。

 

■まとめ:話題のロピアは就職先としてアリ?!

 

ここまでデータからわかる点を分析してきました。

収益性の面からみると、経営拡大に勢いがあるのは間違いなく、店舗当たりの売上高に裏付けられた独自の事業モデルも感じられます。

 

働く人にとっても給料という面で待遇が良さそうなのも確かな一方で、残業が多そうで労働負荷が大きそうな点も見受けられました。

 

ここから言えそうなのは、

〇経営トップは今の自分たちの事業モデルの強さを踏まえたさらなる経営拡大に自信を持ち、この事業拡大とともに自分も成長していけるイメージに魅力を感じる若い人が集まっている

〇急速な事業拡大は働き手に強烈な負荷を与えており、それについていけずにやめる人も多い中、成長意欲の強い若手を集めるために相応の待遇を示している

といったところでしょうか。

 

データからですらはっきりとわかる、このイケイケドンドンな部分が合うか自分に合うかどうか、これが就職先として考えたときの分岐点なんでしょうね(笑)。

 

以下は就職サイトにおけるロピアからのメッセージです。

 

■“2031年にグループ売上1兆円企業”となること

おかげさまでロピアは生鮮部門で対前年比総売り上げ高伸び率がNo.1となりました(2015,16,17,18年連続)。さらに先を見据えたこの大きな目標に向けて「3年以内のチーフ昇格」を目標に、若手にもどんどん責任ある仕事をお任せする方針です。誰でも挑戦できる体制があり、他では想像できないスピードで、一人ひとりが自分自身が驚くほどの成長を果たしています。

 

1つ言えるのは、会社が成長過程にあるところで働いたことがある、という経験は確かに貴重だという点です。

 

衰退過程にある会社だと、何かにつけて新しいことをやらない理由を探したり、人の仕事にケチをつけたり足を引っ張ろうとする企業文化のカビがはびこっています。

 

もしもそんな会社に新卒で入ってしまったら、

「これ、やらないほうがいいのかなぁ」

なんてどんどん委縮して人間として小さくまとまっていく可能性も否めません。

(私の場合、新聞社とかそうでした、笑)

 

「思い切ってどんどんやりなよ!」って背中を教えてくれる先輩・上長がいて、小さい成功体験を積めるほうが若い時はいいよね、って思います。

 

しかし、成長過程にある企業の中には、経営トップが従業員に夢を見せて、過重労働をさせて経営拡大を成り立たせているケースがあるのも事実。

この辺の働き方が自分の許容範囲なのかをちゃんと見極める必要がありますね。

 

今はまだ上場していませんが、恐らくどこかのタイミングで株式上場をすると思います。

経営者はここで自分の持っている株式を換金でき、莫大な富を得ることができるわけで、そういう意味でカトパンは絶妙な相手と結婚したな、というのが僕の印象ですね。

 

では。

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