東京五輪の開幕が迫る中、東京都心は猛暑が続いています。
先日の休みも体が溶けそうなほど暑かったのも記憶に新しいところで、私は個人タクシーとして開業を予定している母のところへ手伝いに向かいました。
手伝いに入る前に、この猛暑を乗り切るために散髪をしようとQBハウスに入りました。
このQBハウスの店舗に掲げられている経営理念は、企業が従業員に求めている価値感がとてもわかりやすく表現されていて、大変味わい深いものでした。
今回はQBハウスの企業理念を通じて、理念を表す意味についてつらつら書こうと思います。
QBハウスの企業理念
私がQBハウスに来店したとき、店内は2人の理容師さんに対して待ち人は6人ほどでした。
そこそこ時間がかかりそうな感じだったものの、母の手伝いをする前に散髪ですっきりしたいと思っていたので、待つことにしました。
その待ち時間の間に目に入ったのがQBハウスの企業理念。
全文を紹介します。
我々はお客さまに「ありがとう」と言われる 、
均一で安心感のあるお手軽なサービスを提供し、
世界一多くのお客さまから必要とされる
ヘアカットチェーン店を目指します。
共に働く仲間とは、
時間の価値を高めあう存在である。
お客さま、仲間に信頼される、尊敬される人間へと成長し、
最高の笑顔(感謝)で
世界をなごますことのできる組織へと
日々進化していきたい。
皆で選ぶ、お客さま、仲間からより強く選ばれる為に
[ 言葉・態度・表情・思考 ]
出典:QBハウス 企業サイト
特に、私の心に留まったのは、「均一で安心感のあるお手軽なサービス」という部分です。
「均一で安心感のあるお手軽なサービス」を読み解く
「均一で安心感のあるお手軽なサービス」は、QBハウスが生み出す価値をそのものズバリ示されています。
「均一で安心感」とはやもすれば没個性ともとれますが、安心感を与えるための均一性、つまり店員さんが誰であろうとも、QBクオリティでカットしてもらえる、というニュアンスでしょうか。
そして「お手軽なサービス」、目指しているのは最高とか感動とかそういう大げさなものを提供するのではなく、何気ない日常にそっと寄り添うようなイメージでしょうか。
そこには、ある意味で過剰な接客も、天才的なカット技術などもありません。
安心感とは再現可能であってはじめて生まれます。
むしろ、再現できない、安心につながらないものはQBハウスにとって邪魔なのです。
ここまではっきりと示されると、そこで働いている人も自分が何をすべきなのかを思い浮かべやすいですよね。
この提供したい価値に対して、「世界一多くのお客さまから必要とされるヘアカットチェーン店」を目指すとあります。
ヘアカット界の「ユニクロ」みたいなベーシックを目指す、という方向感が伝わってきます。
従業員にどうあってほしいのかを伝える意味
もう1つ。
共に働く仲間とは、 時間の価値を高めあう存在である
という部分も引っかかりました。
お客様にとってお手軽なものであり続けるための努力を従業員に求めているように思えました。
可能限りのリクエストになるべく10分で応えていくためには確かな技術も必要ですし、無用なクレームも避けないといけません。
待っている間のモニターには、QBハウスの社内カットコンクールの映像も流れてきました。
調べると、QBハウスは社内の研修・評価に力を入れているようでした。
「サービスの質」では、「この価格でこのサービスに感動」と満足・お褒めのお言葉をいただく機会の方が増え、「人財確保・人間力向上」では、独自の「カット理論」を確立させ「ロジスカット」へ繋げ、既存社員には店長以上・本部社員全員が360度評価され人間力・組織力をアップさせる共通研修をスタート、「組織・働く環境」においては、お互いを認めるために国内外の店長を一堂に集め表彰、同時開催で社内カットコンテストを毎年、パシフィコ横浜で開催。あわせて、静脈認証による勤怠管理、給与支給をしながらの研修無料、休日日数選択制、評価制度、社内検定、定年なしと業界常識をことごとく潰していき、働きやすい環境を整えていきました。
そして離職率は下降線の一途を辿り、ついに4人に1人が10年以上勤務し、20歳~81歳までが元気に働く職場へと生まれ変わりました。
出典:進化、成長面で第三者から評価の高い「QB HOUSE」
QBハウスの世界観・価値観が企業理念という形で、きっちり文字化されていたのがなんとも味わい深いものでしたし、その理念を実現するための取り組みも素晴らしいと思いました。
今回紹介した企業理念は、創業からあったのではなく、創業者が退任したことを契機に、つくられました。
以下の記事の中で現社長の北野泰男氏はこのように語っています。
「当社の事業はビジネスモデルがしっかりしているので、創業者が現役のうちは、経営理念がなくても会社が成長できたからです。
しかし、創業者が退任し、組織が大きくなって社員が増えると、会社の目的や存在意義をそれぞれが自分の解釈で語るようになり、言うことが人によって少しずつ異なるという問題が起きてきました。
そこで私たちは、創業者の想いをきちんと言語化して、『我々はなんのためにこの事業をしているのか』を、社員全員が共有できるようにしたのです」
とかく、経営理念や企業理念というと、ただの飾り・お題目のような印象があるのは否めませんし、そういうものもたくさんあります。
しかし、こうした理念体系はわかりやすく、お客様や従業員に伝わってナンボだと思うのです。
QBハウスのように経営層と従業員とが理念を共有して一体感を持とうとする企業は企業評価・分析においても、重要なポイントと言えますね。
ただ、QBハウスが株式投資先として素晴らしいかどうかはまた別の話ですけどね(笑)。